素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 こくんと頷いたアリスは、治療院を出て、もう日が落ちかけて薄紫の空を見上げた時、パッと頭に閃いた。

 薬なら、原料を集めて作れば良い。どこかの誰かが作ってくれるのを安穏と待つなんて、出来ない。

 アリスには勉強が出来るということしか、自覚している長所はなかった。最終専攻が数術であったので、薬学も基本を修めた程度ではあるけれど、高等学院で学んでいるし、城の図書館にある貴重な薬学の本も、文官である自分になら上司の許可さえあれば読むことも出来る。


 笑顔の彼のいる場所へと、たった一歩ずつでも進みたかった。いつ来るかわからないものをただ待つだけなんて、絶対に嫌だった。

 そうしたら、きっと言える。そう思った。

 ずっと前から好きだったと、彼の紺色の目を見ながら。
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