素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

14 大丈夫だよ

「あれー、アリスくん。まだ着替えしてないの? それに昨日は大丈夫だったの」

 朝、室長室に来ると、サハラ室長は私服のままのアリスを見て、驚いた顔をした。その緊張感のない様子はいつも数字を追って疲弊している部下に必要以上の威圧感を与えないように、彼なりに計算しているのだ。でなければ、国中の頭脳が優秀な人間を集めている文官の中で、抜きん出て役職付きになどなれない。

 アリスは、自分の上司であるサハラ室長は嫌いではない。むしろ好きな方だ。与えられた仕事さえ、きちんと期日までに仕上げていれば、少々遊んでいても何も言わないし、愛妻家でもある彼はやたらと女性には甘い。そして、事あるごとに声をかけて部下の状態も把握している。この人の元で働けて幸運だとも思っている。

(……まあ、噂好きなのは、元からの性格だと思うけど)

「あの、室長。突然のことで申し訳ないんですけど、数日お休みを頂きたくて……後、その、これは個人的なお願いなんですけど、城の図書館にある重要書籍を見る許可も頂きたいんです」

 アリスの言葉を聞いてサハラ室長はズレていた眼鏡を直した。ふむ、と首を傾げると、机の引き出しからある書類を一枚出して署名した。
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