素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 大好きな彼に嫌われたら、どうしようと弱い自分が囁くのだ。

「……ん、アリス。なんか言いたいことあるの?」

 真っ赤な顔をしてこくこくと必死に頷くアリスに、ゴトフリーは優しく微笑んだ。

「焦らなくて良いよ。俺はいくらでも待てるし、ゆっくり言って」

 なかなか言葉が出ないアリスに、ゴトフリーは辛抱強く待ってくれる。

 優しく紺色の瞳に見つめられて、勇気の灯が灯る。さっきくれた愛の言葉が、この人はどんな醜態を晒したとしても、きっと私のことを好きだと言ってくれるという確信も、きっと背中を押してくれた。

 しばらく、言わなきゃと言えないが心の中で戦った。こんなチャンスは、きっとなかなかない。話の流れもあるだろうし、彼が「愛している」と言ってくれたから、自分も彼に返したいと思ったのだ。

 その後、空の上でたっぷりとした時間を置いてから、アリスはちいさな声で言った。それはゆるい風の音にもかき消えてしまいそうな、ちいさな声だった。

「……ゴトフリー、すき……」

「……アリス……?」

 その紺色の瞳を見てはっきりと言った。

「あのね、私……ゴトフリーのこと、すきなの」
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