素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

20 図書館

 上司である室長に調べ物を頼まれて、図書館へとやってきたアリスは参考資料の題名を書いている紙を片手に書棚と書棚の間を縫うように進んでいた。ヴェリエフェンディ王城にある図書館は巨大で、それが目当てで外国から旅行に来る人も多いと聞く。

 蔵書が多いのは無類の本好きにとってはとっても有難いのだが、こうも多いと何冊も必要としていると、探しているだけで時間を消費してしまう。専門の司書も居るには居るのだが、広すぎて彼らを探している間に目的の本が見つかるだろう。

(この統計学の本はかなり新しいのね。発行されたのは、今年……)

 手に持った本の奥付を見ながら次なる本を求めて、分類されているだろう方向へと進んだ。天井はとても高くて、壁には本の背表紙がよく出来た壁紙のように無数に並んでいる。

 本の独特の匂いは落ち着く。アリスはちいさな頃から、本が大好きだった。英雄譚や御伽噺、勇者に愛されるお姫様。胸をドキドキさせながら、一日にいくつもの世界に入り込んだ。ベッドに本を持ち込んで夜もずっと読んでいたから、呆れた母に取り上げられるまでが寝る前のお約束だ。

(たくさん本は読んだけれど、竜騎士と文官の恋を描いたものはなかったわね……字面で見たときにロマンチックじゃないし当然かしら)
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