素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 リリアは今夜何度目かの褒め言葉を口にした。今着ている作ったばかりのドレスはゴトフリーの瞳の色である紺のふんわりとしたドレスだ。効果的に白のフリルが使われていて、何度か行われた仮縫いの段階からこれが着られると思うと心が浮き立って仕方なかった。髪と化粧はリリアがよくお願いしているという髪結師を兼ねた化粧師さんに頼んで、一緒にしてもらった。そんなリリアこそ、恐らくダニエルの瞳の色だろう若草色のすとんとしたドレスがよく似合っていた。彼女は童顔でふわふわの稲穂のような金髪が魅力的なんだけど、今日はそれを綺麗に纏めてまるでいつもとは別人のような装いだった。

「リリアもなんだか大人っぽくてすごく素敵だよ。そういう一面もあるって知れてすごく驚いちゃった。今日は一緒に舞踏会に行けて嬉しい」

 ふふっと二人で笑い合って窓の外を見た。まるで御伽噺の舞台のようなヴェリエフェンディの美しい王城はすぐそこだ。あの場所で毎日働いてはいるんだけど、こうやって夜に着飾って訪れることになるなんて思ってもみなかった。

「……お姫様達、そろそろ着くよ。アリスはマーシュさんに引き渡すまで俺達の傍を離れないように」
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