素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 ダニエルが窓の外を確認しながらそう言うから、アリスは首を傾げた。多分仕事を終えたばかりのゴトフリーは迎えには来てくれてはいるだろうけれど、今日は人出も多くてごった返すだろうし馬車を降りて二人と別れてから自分だけで探すつもりだったのだ。

「ダニエル、私もう子供じゃないし大丈夫だよ。一緒に連れて来てくれただけでも有り難いんだから、馬車を降りたら二人で楽しんで来てよ」

 そう言って笑ったアリスの顔を見て、ダニエルは眉を寄せて首を振った。

「ダメだ。何かあったらどうする。絶対にそうしないと気が済まないから、言うことを聞いてくれ」

 そう言った彼は頑なな表情を崩そうとはしない。何かあると言ってもヴェリエフェンディの王城内だ。そこら辺中に衛兵は居るだろうし、なんなら今夜男性側の招待客は騎士しかいないと言っても過言ではないのだから、何かあったとしてもすぐに助けは来るだろう。

 その言葉にびっくりしたアリスの耳元でリリアは囁いた。

「ダニエルがこうなったらもうダメよ。言い出したら聞かないんだから、言うことを聞いてあげて」

 ひどく心配性な彼氏の行動には慣れているだろうリリアは、肩をすくめた。
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