素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 アレックも初めて見るこの光景を興奮しているようだ。ただ、こいつはアリスと一緒に居る時は遠慮していつも心を閉ざしているから、今なんて言って興奮しているかはわからないけど。

「ねえ、ゴトフリー」

「ん? 何?」

「あのね、ゴトフリーってこの手のひらみたいだなあって思ったの」

 またよくわからないことを言い出した可愛い恋人の言葉を不思議に思い、首を傾げる。そんな自分の様子にふふっと嬉しそうに微笑んで、アリスは言葉を続けた。

「私はこの白い雪みたいに、ずっと空中をさまよっていたけれど、ゴトフリーは温かくして待っててくれて私の心をとかしてしまうんだよ」

「アリスがとけたら嫌だな」

 茶化して言ったら頬を膨らませた。そんな表情も可愛すぎて、出来たら頭の中でずっと保存していたい。

「もうっ……そういう意味じゃなくて、ゴトフリーが変なこと言うから……言いたいことわかんなくなっちゃった!」

 そう言ったアリスは気分を害したのか、ぷいっと前を向いてしまう。だから、背中からそんな彼女を抱きしめながら、言った。

「余計なことを言って、ごめんね。俺は雪のままのアリスでも、とけてしまって水になっても、好きなことに変わりないんだよ。そう……君が俺を選んでくれたあの時から、ずっとね」
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