素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

07 憧れ

 アリスは窓口業務が落ち着いた午後、月末の締め日に向けて書類をまとめていた。今期は年度末の数字合わせもあるから、そろそろ泊まり込み作業も多くなる。


 もちろんそれでお金をもらって生活している訳だから、仕方ないと割り切ってはいるけれどまた家でゆっくり出来ない程の多忙な日々が続くと思うと憂鬱な気持ちもあった。

 とんとんと室長に提出する書類を揃えると、次の束へと取り掛かった。その時一枚の紙がはらりと机から落ちて慌ててそれを追いかけた。

(あ、ゴトフリーのこの前の遠征費用を精算する書類だ)

 その名前を見ただけでときめく気持ちのことは、もう無視しないことにした。そう、アリスはあの飲み屋で五人の竜騎士と会うもっともっと前からゴトフリーのことを知っていて、時折書類を持って来てくれる彼の笑顔に癒されていた。

 でも、彼は竜騎士の肩書を持ちあの整った容姿だ。自分など相手にされることはないと最初から諦めていたのだ。


 最初に彼を意識し出したその時を、アリスははっきりと今でも覚えていた。

 偏見なのかもしれないし、もちろん例外が居ることは知っているが、主に肉体労働を仕事とする騎士の文字は読みづらくとりあえず必要なことを書けば良いという、自分勝手な性格が透けて見えるような書類が多かった。
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