素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
(なんなのよ、こっちは古代文字の解読担当じゃないのよ。せめて誰かが読める字で書きなさいよ)

 虫が這ったような文字と添付されている領収書や請求書を照らし合わせて、アリスはなんとか仕事を進めていた。個人の遠征費用などを精算する際は個人の口座に入金するだけで済むが、商会などにいわゆるツケで購入しているものなどは小切手などを手配して支払わなければならない。

 どんなに汚い文字だろうがきちんと上長の判が押された必要書類を提出している以上、支払いが滞ればこの仕事をしているアリスの責任になる。どうしても読めない場合は部署まで送り返したり本人を呼び出し話を聞き取りしつつの作業になるが、振り込みには期日もありその手間が惜しかった。

 そして、かなりの時間をかけてある難読書類に打ち勝った後で大きく息をつきながら、それをめくって次の書類に取り掛かろうとした、その時だ。

(え、何。今まで見たこともないくらい、めちゃくちゃ綺麗な文字)
< 52 / 292 >

この作品をシェア

pagetop