素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 その言葉を無視してアリスは歩き出した。こんなに軽いことを言うゴトフリーなのに、ゴトフリーなのに。さっき助けてくれた時に、めちゃくちゃ格好よく見えたのは絶対気のせいだ。

「ごめん、冗談だよ。アリス、明日休みだろう? 俺も非番なんだ。良かったらデートしよう。アレックがそろそろ遠出したがってる」

 アレックというと、彼の竜のはずだ。ゴトフリーの提出する書類にいつも名前があるから良く覚えていた。空を飛ぶ竜に乗ってどこかに連れて行ってくれる、ということだろうか。ゴトフリーと過ごせる素敵な休日と自分のちっぽけなプライドがせめぎあう。

 やがて勇気を出してある決断を下すとアリスはちいさな声で言った。

「……良いよ」

「やっぱりダメか……って今アリス、良いよって言った?」

 慌ててその長い足で追いつくと、視線を合わせないように歩くアリスの顔を覗き込んだゴトフリーに早口で言った。

「何度も確認するなら行かない。それに、これはさっき助けてくれたお礼なんだから、勘違いしないで」

 赤くなっている顔を隠すように足元を見ながら、歩くアリスにゴトフリーは両手を上げた。

「わかってるよ、絶対勘違いしないしない。約束する。よし、せっかくだし美味しい弁当も頼まなきゃだな。ありがとう、アリス。また予定がまとまったら家まで迎えに行く時間を伝えに窓口に行くな」

 本当に嬉しそうな笑顔でそう言う彼に、お弁当は私が作りたいって言いかけてやっぱり言えなくて、アリスは書類を抱き締めながら通信室へと向かう足を早めた。
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