竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
(ナトラージュ。俺でも……あれは……ちゃら男に、酷いことをしたと思う。それに、あそこに居る全員が、得をしない嘘をついてどうすんだよ……泥沼にしかならないじゃないか)

「ラス……どうしよう」

 自分の方を向いてポロポロと涙をこぼしているナトラージュを見て、ラスは困惑するように言った。

(あー……どうしようって……ナトラージュ。あいつが、好きなんだろ。それをちゃんと、言ってやれば良かったじゃないか。なんでさっき言ってやらなかったんだよ)

「だって……私、酷いことして……傷つけて……」

(まあ……そうなんだけど……あいつは、ナトラージュが自分のことを好きなのか確信を持てずに、ずっと辛かったんじゃないのか。かなりの好意を持っていることは、周囲は皆わかっていたし、それを確認したかったはずだ。なのに、ナトラージュがこのところずっと避けていたから、話も出来ずにイラついてても仕方ないと思う。新作読めなかった時の、俺みたいに。いつものあいつなら……もっと余裕あるっぽい感じだったしさ)

「もう、好きって言っても……信じて貰えないかも……」

(……それは、言ってみないとわからないだろ。かもかも言ってるくらいなら、追いかけろよ。仕事あるかもしれないけど。だとしたら終わるまで、待てば良いだろ。このところ、ナトラージュをずっと待っていたあいつみたいにさ)
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