竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 クラリッサ城、そして王都を騒然とさせた暗殺集団闇鴉の襲来から、もう一週間が経っていた。

 彼と心を通い合わせたあの後。

 ヴァンキッシュは、彼らの狙いが自分だったという事もあり、両国の担当官からの事情聴取などで忙しくしている。早く会いたいと一日に何度も手紙をくれるだけで、まだゆっくりと会えていない。

「そうか。高い天井だと、彼の翼が痛まずに済むね……君も、そろそろ初めての|縛られし者(リガート)を手に入れる頃だろう。もう既に傍に居るラスとの相性もあるからね。彼と慣れるまで、部屋はいくつかあった方が無難だろう」

「……そうだと、嬉しいです。いつか、導師様たちのように、名のある幻獣を召喚してみたいです。この前のルビナード様の闘竜は……本当に素晴らしかったです」

 アブラサスは前向きな弟子の言葉に満足そうに微笑み、長く白い顎髭に手をやる。

「君は努力家だからね。そして、幻獣たちが好む人間らしい感情豊かな性格をしている。君自身がそうなりたいと望み、弛まぬ努力を続ける事が出来るなら、いつか夢は叶うだろう。諦めない限りは、その道は途切れない」

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