竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる

21 右だけ

「確かに、失ってしまった記憶で自分が何をしていたのかは、気になると思います……わかりました。出来るだけ再現するようにします」

 ナトラージュは、彼の甘えるような声音で発せられた願いを聞き、意を決して大きく頷いた。

 思えばあの時、彼は身を挺して危険から自分を救ってくれていた。記憶がなく自分が何をしたのか気になるから知りたいと言うのなら、それに協力するべきだと思った。

「えっ……良いの?」

 自分からそうしたいと言い出した癖に、ヴァンキッシュは少し戸惑っている表情だ。今まで数多くの女性と浮名を流していた彼とは思えぬ初心な様子に、ナトラージュは首を傾げた。

(彼には……私と出会う前には、他の女性と今まで幾度となく、こういう事を経験しているはずなのに。どうして、戸惑っているのかしら)

 考えても仕方ないと思ったナトラージュは、ベッドに全裸で寝ていた体勢になってもらおうとテキパキと指示を始めた。

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