殺すように、愛して。
 あ、ああ、となかなか過ぎ去らない享楽に声が漏れ、余韻に体を震わせる俺の首を解放した黛は、瀬那、たくさん我慢したから、気持ちよすぎたね、と理性をなくしかけていると思った俺の意に反し、余裕そうな口調のままそう言って、咳き込む俺を気にも止めずにキスを落とした。舌を差し込まれ、苦しくも陶然としたままその舌を受け入れ、ゆっくりと、ねっとりと、唾液を絡ませ合う。そうした状態で、黛の手が、俺の視界を奪っていたネクタイを外した。ぼんやりとしたピンク色の世界で、黛の姿を至近距離で目にする。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみだ。俺にキスをしているのは、まゆずみだ。俺に触れているのは、まゆずみだ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。

 ん、ん、と積極的に舌を出す。動かす。黛もそれに応えてくれる。応えた上で、リードしてくれる。くちゅくちゅとした水音に、目の前が眩んだ。うっとりとして思考を奪われ、達った後のキスに夢中になった。気持ちよかった。気持ちいいのが、緩やかにずっと、続いていた。引いては押し寄せる波が、永遠と続いていた。きもちいい。きもちいい。きもちいい。まゆずみ。

 吐息を重ね、唇を重ね、舌を重ね、糸を引いて離れる。は、は、といつまでも続く高揚感に乱れ、まゆずみ、と俺を凝視する彼を見ながら濡れた唇を舌先で舐めた。目が合っている。俺の目に、黛が映っている。少しも乱れていない黛が映っている。そこにいる。全身、黒。黒い服。予想通り長袖で、長ズボンで、そして、軽めのロングコート。肌色は少なく、重ための前髪が妖艶な雰囲気を醸し出し、軽率に見惚れた。まゆずみ、まゆずみ、まゆずみ。黛の存在自体が、俺を虜にさせる。俺は黛のオメガ。黛だけのオメガ。早く、その確証がほしい。仮でもいいから、たくさん噛んでほしい。何度でも噛んでほしい。番になるまで。なってからも。噛んでほしい。
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