Honey Trap
Trap3




秋の空は青く、高く、冷たく澄み渡り、淀んだ私の心だけが、ぽつり、と取り残されている。



「おはよー、美千香」

「おはよう、里央」


月曜日の―――テスト明けということもあり、若干浮わついた空気の漂う教室で、いつもと変わらず里央と挨拶を交わす。


ひっそりと周りを観察してみれば、会話の中身は昨日のドラマの感想とか、最新のファッションやコスメの話とか、彼氏の惚気なのか愚痴なのか、そんな話題ばかり。

男子に至ってはお笑い番組やアニメの話題にしろ、もっと低俗な内容が平気で飛び交う。


これがリアルな高校生の姿。


「昨日ごめんね。男子連中の悪ノリが過ぎたね。騒がしかったでしょ?」

「ううん。あのドリンクはどうかなと思ったけど」

「あれはふざけすぎだわ」

「和田くん、大丈夫だったかしら」

「あいつは大丈夫でしょ。無理につきあわせちゃったなら美千香に悪かったなと思って」


こうやってみんなの間に立ってフォローを欠かさない里央の周りに、人が集まる理由がよく分かる。


カラオケ店を出たあと、残りの人たちはゲームセンターでまたひとしきり騒いでいたらしい。

途中で切り上げてきてよかった。



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