Honey Trap
Trap3
Ⅸ
秋の空は青く、高く、冷たく澄み渡り、淀んだ私の心だけが、ぽつり、と取り残されている。
「おはよー、美千香」
「おはよう、里央」
月曜日の―――テスト明けということもあり、若干浮わついた空気の漂う教室で、いつもと変わらず里央と挨拶を交わす。
ひっそりと周りを観察してみれば、会話の中身は昨日のドラマの感想とか、最新のファッションやコスメの話とか、彼氏の惚気なのか愚痴なのか、そんな話題ばかり。
男子に至ってはお笑い番組やアニメの話題にしろ、もっと低俗な内容が平気で飛び交う。
これがリアルな高校生の姿。
「昨日ごめんね。男子連中の悪ノリが過ぎたね。騒がしかったでしょ?」
「ううん。あのドリンクはどうかなと思ったけど」
「あれはふざけすぎだわ」
「和田くん、大丈夫だったかしら」
「あいつは大丈夫でしょ。無理につきあわせちゃったなら美千香に悪かったなと思って」
こうやってみんなの間に立ってフォローを欠かさない里央の周りに、人が集まる理由がよく分かる。
カラオケ店を出たあと、残りの人たちはゲームセンターでまたひとしきり騒いでいたらしい。
途中で切り上げてきてよかった。