Honey Trap
Ⅺ
―――まるで芸能人の熱愛報道のようなそれは、退屈な高校生を沸かせるには充分だった。
「おはよ、美千香」
男の暴露から数日、騒ぎはすでに沈静化していた。
瞬間、瞬間で生きる高校生たちの興味なんて、所詮そんなもの。
話題は常に更新される。
流行りは消費され、廃れ、そして循環していく。
「おはよう」
いつもと変わらず里央と挨拶を交わし、日常の中に自分を置く。
目新しい刺激に溺れるより、平穏を保ちたい。
そういう部分では、里央の持つ波長は私と近いのかもしれない。
ただ里央の場合は、映画に関しては誰よりも熱くのめり込むところがあるけれど。
そこが彼女のいいところでもある。
彼女はブレないからいい。