Honey Trap



私たちの関係性を知って、しおらしく謝ってきたのはいったいなんだったのか。

変わらず言いたい放題じゃない。


劣等感、嫉妬、羨望。

綯い交ぜになったコンプレックスを持て余している。


「選びたい放題だもんな、イケメンは」

「そんないいもんでもねーよ」

「うわ、贅沢言うなよ。クリスマスなんて選り取り見取りだろ」

「残念。俺はおまえらほどロマンチストじゃないんで」

「は?どういう意味?」

「そのまんまの意味だよ。一般的にクリスマスに夢見る女性は多いからな」

「はぁ…」


クリスマスに誰か1人を選べば、相手の期待値は高くなるものね。

自分だけは特別、って。


和田くんは分かっていないみたいだけど。


「人には、それぞれ苦労があんだよ」



まさか、この会話があの事件に繋がっていたなんて。


この時は夢にも思わなかった。



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