Honey Trap
「俺なんも考えずに喋ってた、ごめん」
「ううん」
「怒ってる?」
「怒ってないよ、なんで?」
さっさと歩いていく私を、和田くんはばつの悪そうな顔で見つめる。
怒っているんじゃなくて、無自覚に振り回すからイライラする。
放っておいてほしい。
「里央が待ってるし、冷めないうちに渡さなきゃと思って」
あの場に3人で留まり続けるなんて地獄絵図すぎる。
歪なトライアングルは、それ自体が引き金となってこの関係を揺るがしかねない。
細波すら、立てることに慎重だというのに。
「あ、」
思考の中に浮かび上がった声に、意識を隣へと戻す。
「勝手にクリスマスの話しちゃってごめん」
「あぁ…、里央に聞いたかも」
複数人で遊びに行く話のはずが、さっきの言い方は明らかに誤解させる意図があった。
今更、そんなことに目くじらを立てたってどうしようもない。