Honey Trap
シン、と静まり返った。
動じない私に、里央たちも動けなくなっている。
女も昂っていた感情が、わずかに醒めたのが分かる。
私の発した声はほんの少し宙を彷徨って女の、それから里央たちの耳に届いた。
"久しぶり" "お姉さん"
そのワードだけで、女には伝わっただろう。
私たちは4年前のあの夏、すでに顔を合わせているのだから。
「…やっぱり、あの時の…」
はっきりと敵意を持った表情で、口を開く。
「あれからよ!会ってもくれなくなって、同じ大学まで行ったのに…!あんたが誑かしてるんでしょう!」
呟いた女は、沸々と怒りを再燃させて私を詰りながら掴みかかる。
恋に囚われた醜い嫉妬心が、悲痛な叫びとなって零れ落ちていく。
「…返してよ!私のヒロ先輩を」