Honey Trap
そんな私たちの様子を大人たちが微笑ましげに眺める。
「あら、よかったわねぇ、美千香。お兄ちゃんに遊んでもらえて」
「本当、意外に仲良しになるかしら」
「美千香、あんまりお兄ちゃんの邪魔しちゃだめよ」
「ヒロも小さい子にゲームさせすぎないようにね」
「はぁい」
ママたちの会話を尻目に、私は男を観察する。
「ん?」と男は特に興味がなさそうな声で問う。
「ううん」と首を横に振って、またゲーム機に視線を落とす。
大人とは違う、同年代の友達とも違う。
なにが違うのだろう。
子供だけど、5歳の私から見たら男の存在は大きくて、眩しくて。
それなのに、簡単に私の目線に下がってきてくれる。
今まで出会ったどの人より、近い存在だった。
私は男の魅力に取り憑かれてしまったのだ。
それが、甘美な毒だとも知らずに。