Honey Trap
校門を出たところで1人、また1人と去っていき、大通りに出たところで里央とも別れた。
すっかり日を落とした大通りは、まばらな人通りに対して列を成した車が忙しなく走り去る。
煩いくらいのヘッドライトの光が私を照らし出すから、せっかく暗闇に紛れた孤独が浮き彫りになる。
「ただいま」
閑静な住宅街に、ギィ、と扉が淋しげな鳴き声を上げた。
真っ暗な自宅の玄関扉を開けて、誰もいない空間に律儀に声をかける。
当然、返ってくる声なんてない。
いつの頃からか、この家に私を出迎えてくれる人はいなくなった。
それなのに毎日欠かさないのは、染みついた生活習慣のせいなのか。
本当は孤独を恐れる心が、自分の中にあるとでもいうのだろうか。
両親は仕事でいなくても、私の帰りを待っていてくれた祖父母。
きっと天国で私の素行を嘆いているだろう。
姿のない人たちに取り繕ったって仕方ないのに。