Honey Trap
Ⅳ
「いってきまーす」
―――よく晴れた夏の日。
引っ越しから数日たち、両親のお盆休みが終わると同時に私も新しい保育園へと通い始めた。
朝はママと一緒に登園して、仕事に向かうママを見送り別れる。
ママと過ごす時間は好きだけれど、この朝の時間は憂鬱だった。
さすがの私でも、5歳の幼さでは初めての環境には緊張もするし不安にもなる。
それに加え、子供の頃から周りとの差を感じていた私は、同じ年頃の子たちが集まる保育園という場所が苦手だった。
心配をかけるのも嫌だから周りの子に合わせて遊んでいたけれど、おままごとや鬼ごっこに少しも興味を持てなかった。
祖母がお迎えに来てくれるのを心待ちに過ごす毎日。
真夏の炎天下を2人で歩いて帰れば家に着く頃にはすっかり汗だくで、すぐお風呂に入って汗を流すのが日課になっていた。
お風呂から上がると冷房が効いた部屋で寛ぐ祖父の隣に座って、アイスキャンディーをかじりながら夕方の子供番組を眺める。
甘やかしたい盛りの祖父母も、お菓子は1日ひとつと決められているから食べ終わるとそれ以上は与えてくれない。