Honey Trap



―――ピンポーン…


子供番組の歌やダンスも見よう見まねで覚えてしまう私は、祖父母を喜ばせようとそれらを披露していた。

つい踊りに夢中になっていた私は、突然のインターホンの音に動きを止める。


「あら、ヒロくん。いらっしゃい」


応対する祖母の声に、思わずリビングから顔を覗かせた。

そこには "ヒロくん" と周りから愛称で呼ばれる男が、大きな箱を抱えて立っていた。


「これ、たくさん送られてきたのでよかったらどうぞ」

「まぁ、ありがとね」


祖母と話す様子を扉の隙間からジ、と見つめる。


男に会うのは引っ越しの挨拶に行った日以来、数日ぶり。

生まれてから初めて接した大人以外の年上の存在に、強烈に惹かれるのに、経験がないからその衝動をどう行動に移せばいいのか分からない。


ふ、と男の視線が私を捉える。

ドキリ、とした。


「みっちゃんもヒロくんにありがとう言おうか。いっぱい林檎を貰ったんだよ」


私に気づいた祖母の声に、男のもとへ向かう。



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