Honey Trap
「ほら、言っても俺、高校教師じゃん?外聞良くないからあんま派手に遊べねぇし?」
瞳を細め、唇の端を微かに持ち上げる。
こてん、と拳に乗せた顔をあざとく傾ける姿は、すっかりいつもの調子を取り戻していた。
こうやって調子よく愛嬌を振りまいたり、適当に愛想よくしているから。
上面に騙される "面倒くさい女" を引き寄せているのは自分自身のくせに。
一定以上近づかれたら、容赦なくシャットアウトする。
外聞が良くないなんて、全くどの口が言うのだろう。
だったらどうして、迷うことも、諭すこともなく、生徒の私との関係を受け入れたのか。
結局、行き着くのは意味のない問い。
どこまで行ったって、理想と現実は常に平行線。
諦めと願望とが入り混じって、酷く濁った感情が心を満たす。
それでも、空っぽでも、虚しくても、男がそれを埋めてしまうほどの熱を与えてくれるうちは。
今はまだ、こんなどうしようもない関係に縋りついていたいと思うのだ。