Honey Trap
Ⅵ
…――季節は巡って、男と出会って何度目かの秋が訪れた。
私は小学生、男は中学生になっていた。
「ねぇ、ヒロくん」
「ん?」
すでに日が傾き始めた夕方のこと。
淡いオレンジの太陽が、部屋の中を覗き見するように窓の隙間から光を射し込む。
真剣に参考書に向き合っていたその顔は、私の呼びかけに反応してあっさりとそれから剥がれた。
西日の翳に隠れていたそれが、その拍子に露になる。
柔らかい光の中に浮かび上がる男の容貌は、この数年で"綺麗" の中にも男らしさを備えたものへと成長していた。
初めて会った時の印象よりも、ずいぶんと幼さの抜けた顔つきに、声変わりを終え変化した声音。
伸びた身長に、引き締まった体。
子供から大人へと変わっていく。