Honey Trap



翌朝、いつもより少し遅めに家を出る。


通りまで出れば、周りには同じように学校へ向かう小中学生の人集りが見える。


「あれ、美千香じゃん」


しばらく歩いていると、白々しい男の声が私を呼んだ。

振り返ると、私の前では見せない爽やかさをその表情に貼りつけた男と、その横には子供の私から見てもマドンナと呼ばれるのも納得の美人なセーラー服姿。


「ヒロくん。おはよう」

「おまえ、こいつのケーキ食った?感想、教えてやってよ」


その瞬間、女の綺麗な顔がピシリと固まる。


知らない女の手作りケーキなんて、食べられるわけないでしょ。


「お姉さんが作ったんですか?美味しかったです」


無邪気に答える私に、分かりやすく血の気が引いて青ざめる女。

隣に立つ男は、無頓着を装っている。


恐ろしい男。

ここまで、全てが男の計算通りなんだろう。



「…ねぇ、どういうこと?」


女の声が、震えたような気がした。



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