社長は身代わり婚約者を溺愛する
お父さんが、箸を投げ捨てた。

「悪かったな!ウチは貧乏な工場経営で!」

「ちょっと、お父さん。」

私の代わりに怒ってくれるお父さんを、お母さんが抑える。

「それで?その事に礼奈は、納得したの?」

「するしかないよね。」

お母さんは、はぁーとため息をついた。

「どうして、しがみ付かなかったの?」

「しがみ付いてどうするの?」

「好きだったんでしょ。」

お母さんの言葉に、私の手が止まった。


「デートに行く礼奈の姿見てて思った。ああ、この子。今精一杯恋をしているんだって。」

思い返すと、デートに行く服を買いに行った事もあった。

「何だかお母さんまで、恋してるみたいな気がして、嬉しかったのよ。」

「それは、有難う。」

でも、その恋は終わってしまった。

結局私は、芹香に負けたのだ。

「ご馳走様。」

私は自分の食べたお皿を片付けた。

「ちょっと、外に出てきます。」
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