社長は身代わり婚約者を溺愛する
「分かりました。」

その女性と一緒に、私は端から書類をファイルに閉じていった。


「ねえ、森井さんは下沢さんの事、どう思っているの?」

女性に話しかけられ、ちょっと意外に感じる。

「ええー、親切な人?ですかね。」

「親切か。付き合っている訳じゃないよね。」

「ですね。」

するとその女性は、安心したような表情をした。

「よかった。下沢さんって、この部署のアイドル的存在なのよね。」

「アイドル……」

何か、その言い方、分かる気がする。

皆に、親切そうだから。


「だから、倒れて付き添われたからって、調子に乗らないでね。」

手を止めて、その女性を見た。

笑顔だったけれど、不気味だった。

「別に、調子に乗っている訳では……」

「今日も、一緒に出社していたじゃない。」

「それは、エレベーターで一緒になっただけで……」

すると横から、誰かが通り抜けた。

「俺、こっち側から資料、閉じていきますね。」

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