社長は身代わり婚約者を溺愛する
下沢さんは、親切だ。

私の味方になってくれる。

「……ダメです。」

でも、信一郎さんじゃない。

「どうして?」

「惹かれない。運命の人じゃない。」

しばらく下沢さんと見つめ合ったけれど、飽きたのか、下沢さんは顔を離した。


「意外な理由。」

「馬鹿みたいですけど、そういうの、信じてるんです。」

「へえ。」

そして下沢さんは、綴じたファイルを次から次へと、棚に入れていった。

「まだ書類いっぱいあるから、手分けしてやろう。」

「はい。」

流石だ。気持ちを断っても、仕事は一緒にするなんて。


「下沢さん。」

「何?」

「彼氏じゃなくても、私の味方でいて下さい。」

勝手な望みだって、分かってる。

でもこの会社で、私には味方が必要だ。

「ずるいね。」

「そうですか?」

その時、陽の光に照らされた切なそうな下沢さんの笑顔。忘れられない。
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