社長は身代わり婚約者を溺愛する
「別れた彼氏よ。」

「はあ?あんたが⁉」

お父さんは信一郎さんを見ると、頭からつま先までジローっと見つめた。

「で?別れた男が、また何の用事だ。」

「礼奈さんとの、これからの事です。」

「だから、別れたんだろう。」

お父さんは、不思議がっている。

それを見かねたお母さんが、お父さんの腕を引っ張った。

「お父さん、礼奈とやり直したいのよ。邪魔しないで。」

「はあ?やり直したい?」

お父さんは、お母さんに連れて行かれ、私の側には信一郎さんだけが残った。


「……やり直したいって、何ですか。」

「礼奈、悪かった。この通りだ。」

信一郎さんが、私に頭を下げている。

「ちょっと止めて下さい。社長が社員に頭を下げるなんて。」

「今は社長じゃない。ただ一人の男だ。」

そう言うところ、嫌いになれない。

もう一緒にいられないんだから、止めてよ。そういう事。

「礼奈。俺、はっきり気づいたんだ。」

「何をですか。」
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