社長は身代わり婚約者を溺愛する
わざわざここまで来てくれたのに、冷たい態度だって分かってる。

でも、そうでもしないと、しがみ付いてしまいそうだから。

「愛しているのは、礼奈だけだって。」

「でも、結婚はできないんですよね。やり直しても無意味じゃないですか。」

すると信一郎さんは、私の手を握った。

「礼奈は、それでいいのか。」

「そう言われても……」

「俺と、このまま別れてもいいのか?」


ここで、嫌だって言えたら、どんなに可愛い女なんだろう。

残念ながら、私はそんな女じゃない。


「いつかは別れなきゃいけないのなら、今の方がいいです。」

「礼奈。」

その瞬間、信一郎さんに抱きしめられた。

「俺は、礼奈と別れない。」

「信一郎さん……」

「ずっと、一緒にいる。そう決めたんだ。」

信一郎さんの温もりが、私に伝わってくる。

「貧乏な娘でも?」

「礼奈は礼奈だよ。関係ない。」

嬉しくて、涙が出た。
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