社長は身代わり婚約者を溺愛する
「何度も言う。この政略結婚を破断にしたのは、君だ。」

断定されても、答えられない。

「慰謝料は払って貰うよ。」

芹香のお父さんはそう言うと、立ち上がって家を出て行った。


私達は、「待ってください。」も言えずに、家で呆然としていた。

「慰謝料……」

お父さん、あまりに金額が多すぎてぼーっとしている。

「ごめん、お父さん。」

「いや、いいんだ。ただ……」

「ただ?」

「本当に払わなければいけないお金なのかね。」


そうだ。弁護士に相談すれば、何とかしてくれるかもしれない。

「弁護士に、相談しよう。」

私は、直ぐに信一郎さんに電話をした。

『どうした?礼奈。』

「信一郎さん、いい弁護士を紹介して。」

『ええ?どうしたんだ?急に。』

私は、できるだけ冷静に、信一郎さんに伝えようとした。

「今日、芹香と信一郎さんの結婚が破断になったからって、沢井家から慰謝料を請求されたの。」

『いくら?』

「5,000万。」

信一郎さんも、電話の向こうで唖然としていた。
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