社長は身代わり婚約者を溺愛する
「えっ?そんなの聞いてません!」

信一郎さんは、はぁーっとため息をついた。

「1億は、お母様の介護費だったそうですよ。」

「介護費……」

芹香はそう呟くと、ふらっとどこかに行ってしまった。

「芹香!」

追いかけようとした私を、信一郎さんは止めた。

「今は、そっとしてあげよう。」


まさか、芹香のお母さんが、そんな事になっていたなんて。

しかも、それを芹香が知らなかったとは、そんな事あり得るの⁉


そしてその夜、芹香からメールが来た。

【母の病気、本当だったみたい。父が今まで隠していたの。】

たったそれだけの言葉で、芹香の悲痛が感じられる。

【礼奈、お願い聞いてくれる?】

【何?】

【黒崎さんと別れて欲しいの。】

私はその言葉を疑った。

どうして⁉今まであんなに応援してくれていたのに⁉

そして、もう一通。芹香からメールが来た。


【私、黒崎さんと結婚しなきゃ、ダメみたい。】


私は、スマホを床に落とした。
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