社長は身代わり婚約者を溺愛する
その次の日から、私の体調は最悪だった。

きっと今頃、芹香と信一郎さんの結婚が決まっていくかと思うと、憂鬱で仕方なかった。

「森井さん、書庫に行ってこの書類、取って来てくれない?」

「はい。」

先輩に言われ、私は一人書庫に行った。


「はぁー。」

ため息をついたせいで、書庫のドアを開けるのも重い。

やっと開けた書庫は、もわっと息苦しかった。

「はいはい、誰も来ないもんね。」

私は書庫の中に入ると、窓を開けた。

新鮮な空気が入ってくる。

小鳥のさえずりも聞こえてくる。


ああ、このままここで、時間を潰していたいな。

その気持ちを打ち破ったのは、一人のサラリーマンだった。

「ここにいた。」

「下沢君。どうして来たの?」

あれ以来、ちょっと仲が良くなっている下沢君。

「そりゃあ、あれだけ元気がなかったら、心配するでしょ。」

下沢君は、私の元に来ると、手を差し出した。

「先輩に言われた資料って、何?」

「これ。」
< 178 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop