社長は身代わり婚約者を溺愛する
「じゃあ、俺も。」

信一郎さんが、背中を向ける。

その瞬間、私の手が上がった。

「待って!」

信一郎さんが振り向いた瞬間、私は彼を抱きしめていた。

「礼奈?」

「本当は、信一郎さんの事を信じたいの。」


そうだよ。

初めて会った時に、この人が運命の人だって思った。

この人と会う為なら、嘘つきになってもいいと思った。

絶対、離れたくないと思った。


「でも……芹香との結婚、本当に断れるの?」

信一郎さんは、私の手を握ってくれた。

「信じてくれるんだろう。」

お互い、見つめ合う。

「俺をもっと信じて。もう二度と離れられないくらいに。」

「信一郎さん……」

私達の唇が、少しずつ近づいて、柔らかく重なった。

「芹香さんとの事は、なんとかするから。」

信一郎さんはいつも、私の不安を拭ってくれる。

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