社長は身代わり婚約者を溺愛する
『黒崎さんのご両親、面食らっていたわ。』

それを聞いた私は、信一郎さんを愛おしく思った。

はっきり言ってくれたんだ、信一郎さん。

なのに私、別れたいだなんて言って。

ごめんね、信一郎さん。


『それで何だけど、増々黒崎さんを気に入ったって、お父さんが言うの。』

「芹香のお父さんが?」

私は、食事会の時に見た芹香のお父さんを思い出した。

終始ニコニコしていた芹香のお父さん。

お金の事だけじゃなかったんだ。

『今時、珍しいタイプだって。私とも気が合うんじゃないかって。』

私はスマホを握りしめた。

『だから礼奈。やっぱり黒崎さんと、別れてくれる?』

「芹香……」

『私と黒崎さんの結婚は、親同士で進んでいるわ。お願いね。』

私はそこで、電話を切った。


「何だって?芹香ちゃん。」

私は奥歯を噛み締めた。

「信一郎さんと別れて欲しいって。」

「ええ?芹香ちゃんも案外、しつこいな。」

「芹香も同じ事思ってるんじゃない?」
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