社長は身代わり婚約者を溺愛する
「週末……」

週末はいつも、私と会っていたのに。

「心配するなって。礼奈は、平日でも会えるだろう。」

「えっ……」

信一郎さんはおもむろに、キーホルダーから一つの鍵を取り出した。

「俺の家の鍵。」

「……合い鍵って事?」

「そう。」

私の手の平に入る小さな鍵。

それが、信一郎さんとの、大きな未来を握っている。

「平日はこれを使って、俺の家においで。」

「うん。」

私は、信一郎さんに抱き着いた。

「ありがとう、信一郎さん。」


この合い鍵のおかげで、元気が出た。

私は信一郎さんを信じているし、信一郎さんも私を愛してくれている。

それに嘘はなくて。

きっと、信一郎さんなら、芹香が納得する諦め方を、探してきてくれると思う。


「上手くいくといいね。」

「ああ。」

私は信一郎さんの温かさに、酔いしれていた。
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