社長は身代わり婚約者を溺愛する
「今は、入院しているの?それとも、家?」

「分かりません。」

「意外と冷たいんだね。」

「お母さんには、二十歳の頃から会っておりませんので。」


えっ……5年もお母さんに会っていないの?芹香。

「会っていた頃は、元気だったのかな。」

「まあ。そこそこ。たまに体調が悪くて、臥せってましたけれど。」

「じゃあ、病気になられて、結構経つんだね。」

信一郎さんがそう言うと、芹香はフッと笑った。

「お母さんの話をしに来たんじゃありませんよ。」

「そうだね。君は、仕事は何をしているの?」

「してませんわ。」

「どうして?」

「お父さんが、家の管理をしなさいって言うので。」

おかしい。芹香は、いつも自分の決めた道を歩みたいって言っていたのに。

仕事も、在宅でやっているって言ってたのに。

私には嘘をついていたの?


「具体的には、どんな事をしているの?」

「使用人の管理ですかね。」

「使用人の管理?君が?」

「ええ。結婚しても、やる事になるのだから、今の内に慣れておきなさいって、お父さんが。」

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