社長は身代わり婚約者を溺愛する
この人、芹香を知っている。

「へえ。沢井薬品のお嬢さん、こんなにお淑やかな感じだったかな。」

ヤバい。バレる。

私は、いつの間にか信一郎さんの腕を掴んでいた。

「そうか。あの元気のいいお嬢さんを、大人しくさせたのは黒崎の魅力か。」

「えっ?」

「じゃあ、せいぜい振られないように、頑張るんだな。」

そう言って黒崎さんは、行ってしまった。


間一髪だった。

でも、確実にあの三崎さんって人は、芹香を知っている。


「三崎さんって方、信一郎さんの友人?」

「大学の同級生だよ。この前、一緒に仕事をしたんだ。どうして?」

「あの方、私の事誤解しているみたい。」

「ああ、元気のいいお嬢さんだって言ってたもんな。」

良かった。

信一郎さんは、私の事を疑っていないみたい。


「行きましょう。」

そして私達は、レストランに入ると、コース料理を食べた。

「美味しいか?芹香。」

私は、ゆっくりと頷いた。
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