社長は身代わり婚約者を溺愛する

第9話 就活

その日は、信一郎さんの温もりで起きた。

気が付くと、後ろから信一郎さんに抱きしめられていた。

後ろを向くと、信一郎さんがスースーと寝息を立てて眠っている。

こんな景色を見られるなんて。

胸がじんわり温かくなる。


「ん……」

信一郎さんが、眠い目を擦る。

「起こしちゃいました?」

「ううん……芹香は、もう起きた?」

「はい。」

すると信一郎さんは、私の上に覆いかぶさった。

「朝も、愛し合おう。」

私が返事をする前に、信一郎さんと繋がる。

「信一郎さん……」

「芹香、その顔そそられる。」

信一郎さんは、私を見つめながら、一心不乱に腰を振り続ける。

きっと、私を満足させたいのだろう。


でも、信一郎さんが愛しているのは、芹香であって、私じゃない。

「信一郎さん……」

胸が痛くて、涙が出てくる。

「どうして……泣いてる?」
< 81 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop