社長は身代わり婚約者を溺愛する
夢のような一晩。

私はタクシーに乗っている中、その幸せに浸っていた。


やがて、タクシーは私の家に着き、私を降ろした。

お金を払って、タクシーが行くと、何だか寂しくもあった。

「もう夢は、終わりか。」

荷物を持って家に帰ると、両親が工場の中で項垂れているのが見えた。

「どうしたの?」

私はそのまま、工場の中に入った。

「ああ、礼奈。」

お母さんの目に、涙が溜まっている。

そして私の腕の中に入ると、嗚咽を漏らしながら泣き始めた。

「えっ?お母さん?」


するとお父さんが、私の側に寄って来た。

「すまん、礼奈。今月の給料出せない。」

「えっ……」

今までだって、少しは貰えていたのに。

「いいけど、生活費は?お父さん達の分は、出るんだよね。」

そう言うと、お母さんは倒れ込むようにして、しゃがみ込んで泣いてしまった。

「これが、今月の収支だ。」

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