海色の世界を、君のとなりで。

「綺麗だな……」


となりで同じように空を見上げた可奈がぽつりと呟いた。

それからわたしに視線を戻して、にこりと笑う。


「栞ちゃん、中庭に誘ってくれてありがとう。こんなに綺麗な空が見られて、私今すごく幸せ」

「……こちらこそ、快諾してくれてありがとう」


星野から離れたいがために咄嗟に提案した嘘だったのに、何も言うことなくこんなにも素直に頷いてくれて。

お礼まで言ってくれて。

まるで自分が悪いことをしているような、モヤモヤとした感覚になる。

罪悪感を感じずにはいられなかった。

けれど。


「また誘ってね」


そう言って、彼女がふわりと笑うから。


わたしはいつだって、その優しさに甘えてしまうのだ。
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