海色の世界を、君のとなりで。

視線を床に落とす。

唇を噛んでいると、頭上からはぁ、と盛大なため息が落ちてきた。


「この前も部活休んでたし、もうちょっとレギュラーの自覚持ちなさいよ。あなたの立場になりたい人なんて沢山いるんだから」

「……はい」

「それだけ。もう帰って良いわよ」


お疲れ様でした、と一礼して倉庫を出る。

倉庫を出た瞬間、張り詰めていた空気から解放され、押し寄せてきた安堵でガクッと膝の力が抜けた。


「っ、はぁ……」


わたしは真波先輩が苦手だ。

言い方がきついところや不機嫌を露わにするところも苦手だけれど、一番苦手なのはあの冷めた眼差しだ。

いつなんどきも、どんなことをしても責められているような気になってしまう。

あの目を向けられると、ギュッと心臓が縮み上がって、呼吸が上手くできなくなる。


だから、苦手だ。


ゆっくりと手をついて立ち上がる。

歩きながら深呼吸をして呼吸を整えた。


吸って、吐いて。吸って、吐いて。


単純な動作を繰り返して気持ちを落ち着けて、部室に戻る。
< 70 / 323 >

この作品をシェア

pagetop