君の甘い笑顔に落とされたい。

「……あっ、桃ちゃん、そろそろ行かないと!スタジオの予約の時間っ」
「やば、本当だっ。じゃあ私行くね?なにかあったらいつでも連絡してよ?」

「うん!ありがとう、桃ちゃん」


冬にもまたライブがあるみたいで、今度はそれに向けて桃ちゃんは頑張ってる。
いいな、何かに夢中になってる人って、キラキラしてるよね。

桃ちゃんを教室から見送りながら、そんなことを考える。


──椎名くんが来たのは、それから30分後のことだった。

もう教室には私以外誰も残っていなくて、「待たせてごめんね」って、申し訳なさそうに椎名くんはそう言った。


「なんか、ちょっとでも時間引き延ばせないかなーって、バカなこと考えてた」


私の隣の席に座って、いつもの笑顔を向けるから、胸が痛む。
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