君の甘い笑顔に落とされたい。
久世くんの横を通って、音楽室の扉へと向かう。
「──え、」
久世くんに手首を引き寄せられたのは、その時だった。
バランスを崩した私は、引っ張られるがまま久世くんの胸の中へ。
一体なにが起こっているのか分からなくて、
ぱちぱちと瞬きをすることしか出来ない。
「あっ、え……?あの、久世くん、わたし……っ」
少し頭がクリアになって、慌てて久世くんから離れようとするけれど。
久世くんが私の首元に顔を寄せるから、ピシッと固まってしまう。
「……さっきから甘ったるい匂いすんなと思ってたけど」
「ぁ、え、えっ……!?」
逃がさないように、手首は強く掴まれたまま。
久世くんがたった数十センチ先で、真っ直ぐに私を見つめる。