NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その5
南部


3人による”検証”は、実にスンナリと結論が出た

オレ達の見解は全く合致していたわ

要するに、今日のZの一件はすべて相和会が仕組み、その通りにコトを運んだ

すべて…

連中はオレ達の内部事情もちゃんと把握していたんだ

黒原さんが他界し、都県境の各グループを括っていた重しがとれガキ集団の均衡が崩れたことも、その結果、”在○系と純血”の対立が表出したことも…

相和会は愚連隊を使ってショバに手をかけてきた星流会へ警告を発するのに、それを絡ませ利用したってことだ

おそらく、ガキを遣わせた方が強いインパクトを与えるからだ

要は相和会を舐めるなよ、というメッセージなんだろう

後ろには関東直系が控えているのを承知で…

これが戦後ずっと、関東・関西いずれの全国組織にも屈せず、一匹狼で極道世界を渡り歩いてきた相和会の神髄なのか…!


...


「何はともあれ、相和会は評判以上の硬骨漢揃いだったな。あの撲殺人だか撲殺男だかってごっついソルジャーなんか、ハンパなかったし。あんな凄味があってこそ、全国組織を寄せ付けないんだろうな…」

積田は変な話、あの倉橋とかっていうイカレ男をべた褒めだった

「俺は、あの剣崎って背の高い幹部、あの男の佇まいに圧倒されたよ。会った瞬間、相手を掌に乗せちまう不気味なほど奥行の深さを感じたわ。あんな連中が仕切ってるのか、相和会ってのは…」

積田と高本は、ある意味、興奮していたわ

まあ、オレたちみたいな悪ガキからしたら、いい悪いは別にして惹かれるものはある、正直…

実際、相和会の相馬会長は、ここの地の住民からある種の名士と捉えられ、同じヤクザでも星流会なんかとは明らかに別格視されてるよ

でもな…

...


「確かにさすがだよ。あの場の演出なんか、事前に想定してた訳わけじゃないんだろうよ。あの撲殺男が追加制裁したのは、オレたちを意識してのアドリブだと思う」

「おい、聖一…。じゃあ、剣崎は倉橋のアレ、予めの申し合せじゃなかったって言うのか?」

「ああ、積田、俺にはそう思えるよ」

「仮にそうだとしたら、言い出した撲殺、それを笑って了承した剣崎、さらにそれを受けてあの血舐めまでに至った実行をためらわなかった撲殺…、全部ひっくるめてイカレれてるぜ。本格的に…」

積田のこの言は、まさにすべてを言い当てていたな

オレと高本は顔を見合わせた

3人は改めて今日の衝撃に打ちひしがれて、しばし沈黙した


...


その後、3人は”これから”を話し合ったわ

「今日、相和会というやくざに担がれてではあったが、対立していた我々の両派が正面からぶつかり合えた。結果的にこれは意義があったと思うんだ。高本、はっきり言わせてもらうよ。お互い、いろいろとしこりは抱えてるが、黒原さん亡き今後は一緒にやってかないか?」

オレはストレートに提案した

高本はいい

たしかに在○という意識は、他の連中以上のものがある

オレ達が自分たちへの排除願望を抱いてるという疑念は、強く持ってるようだし

だが、コイツはそれを正面からぶつけてきてる

それは、自分の正直な気持ちと向きあう勇気を持ち得ているということだ

...


「…」

高本はすぐに返事をしなかった

しばらくの間、オレと隣の積田にその視線を交互させ、何かを見定めているかのようだったな

「積田さんて言ったな。…アンタもその思いでいいのか?」

「ああ、この聖一とはまだ確認し合っていないが、その理由は一緒だと思うしな」

「よかったら聞かせてくれないか?」

積田は顔をオレの方に向け、目で合図してきたよ

オレは小さく頷いてそれを返した

「…よし、なら俺からな。お前は一本スジが通ってる。ブツを届ける遣いは自ら率先して、ヤクザにもちゃんと自分たちの決めた根拠を主張すると宣言した。あの修羅場でも、目の前のことからは逃げなかった。たいしたもんだ。オレは正直なところ、あの場面では、お前の勇気で背中を押されたよ。お前みたいなヤツとは組める。そう思ったわ」

ふふ‥、積田め、オレのセリフ全部奪いやがった(苦笑)

...


「わかった。俺もアンタ達とだったら、やっていきたいよ。所詮一人じゃ、黒原さんのようには到底無理だしな…。で、具体的にはどう行動していくつもりだ?」

高本は端的に切りだしたわ

「…まず、今の都県境を一定の方向へと持っていく核となる集団が必要だ。オレは墨東会がそれを担うべきだと思っている。そこに、骨のある在○のメンバーも加えて、他のグループを引っ張っていける存在にしたい。高本、お前には在○の中から志のあるモンを連れて墨東に加わって欲しい」

オレもズバリ答えた

「墨東会か…」

高本は腕組みをして、再度オレたち二人に目を行き来させ、何やら頭の中で考えを巡らせているようだったな





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