NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
野心という黒い聖火②



その時…、大打ノボルは細い目を一瞬ながらカッと見開いた。

”正直、驚いた。厳密には二つのことにだが…。まずはコイツが、今現在、この九州で今回コトが起こるのを望み、然るべく手打ちの段には関東の仲裁役ではメインキャストになるだろって人物を見越してること。そして、それとの接点をこの三貫野が、オレ達の進む遠大なロードへのワンステップにできると見立てていたことだ!”

ノボルを感嘆させた三貫野の口から出たその見立てこそ、全国組織のやくざ同士の思惑を大打のホームグランド・横浜に於けるステータスアップにつなげるという策案だった…。


***


「…今から話す内容ですが、ほぼ読み外れなしと思ってください。この度の九州勃発を受けた場合、その収束役で関東側のメインプレーヤーは東龍会になる…」

「なにー‼じゃあ、あの関東直系、屈指の有力組織たる東龍会が何らかの利害関係に噛んでて、いずれその球磨黒と一新会の和議が成立する際にはだ…、関東代表で会長の坂内さんがココに出張ってくると読んでるのか、三貫野…⁉」

「ええ、そうですよ。まあ、実際の仲裁人は会長の坂内さん以外も考えられるが…」

「お前…、その東龍会がオレ達の地元である横浜一体を仕切ってる権田組の親筋だって承知の上で、オレに話してるんだな?」

三貫野は念押しを兼ねて、再びニヤリと笑っていた…。


***


「椎名にはあらかた話してます。…東西双方の親筋からはすでに”ゴー”がかかって、球磨黒と一新会は今、そのきっかけを探ってるんですよ。これが、今現在、リアルタイムの正確なココ熊本中心地の情勢になります。…どうです、ノボルさん?ここは我々が、彼らに”ネタ”をプレゼントしてやっては…」

「!!!」

三貫野の後段の言葉に、ノボルは単純に衝撃を受けていた。

「…もうひとつ、耳に入れときましょう。東龍会が直面してる事案の当事者は東西大手いずれの傘下にも下っていない独立系の勇、相和会ですよ。これも間違いない情報だと解釈してもらっていい」

「相和会って、お前…⁉おいおい…、あの相馬とかって伝説の…、気狂異って評判の…、あの男が仕切ってる東京北部の独立系の…、あの武闘集団か!」

三貫野はこっくりと頷いた…。

”何ということだ…‼はるばる出向いた最初の地、ここ熊本を震源地とした極道界の最新ムーブメントを仕切るプレーヤーが東龍会で、しかもその向きあう相手が同じ関東の東京埼玉都県境を地盤とした、東西大手のどちらにも屈していない…、あの相和会かよ…‼なら、オレたちの計画にもろリンクするだろうが…!ふう…、椎名のヤツ…、自分の口からは何も言わずに…。フフ…、これは到着しょっぱなから面白れえ展開になりそうだ…”

ノボルは短い時間でそこまでかみ砕くと、何とも不遜な笑みを浮かべるのだった…。





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