NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その2


広域全国組織、関東側主要軸を成す、東龍会と田代組…。
共に2代目の現組長は、奇しくも高校が一緒の先輩後輩という間柄だった。

田代は親からの代継ぎだったが、坂内は先代の急死で半ばクーデターに準ずる跡目就任に収まった野心家である。
だが、組頂点への階段は対照的とはいえ、この二人は抜群に相性がよかった。

共に親分の地位に就いた時期も近かったという面もあるが、何より二人を結びつけたのは、現状打破、時代に即して仁義よりも利益優先を根底に据えた現実主義の徹底感覚という共通理念だった。

しかも、二人のシンパシーは現実を見据えはするが、その視点は常に将来像であって、目先ではないことにあったのだ。
その視点の具体的な戦略対象としての共通項が、世代が二人より上の相和会の創設者、相馬豹一であった。


...


坂内:…構図としてはそうなる、当然な。だがよう、何と言っても相和会は縄張りのショバ代を永年無料サービスで押し通してんるんだぜ、今に至って…。それで組持たせてるって、信じられんだろうが?

田代:うむ…。実際は全国組織ではないから上納金もないってこともあるが、どう見ても奴ら、財政状況悪くないわな。

坂内:そうなんだ…。その”家計”を支えてるのが建田宗政って訳だ。でなあ、ここ近年じゃあ、やはり稼ぎ頭の建田サイドに勢いはあるようだ。

田代:となれば、我々としては相和会2代目は建田と見立て、そこで立ち回りを考えるってのが得策ってことになるかな…。

...


坂内:いや、今の段階では、相和会の次が誰とかは二の次で見てた方がいい。それより、相馬老い先短しとなった心理面を突く。でよう、内部対立を煽って、然るべき時期に相和会をパックリいただける算段を今からきっちり描くってことが肝要さ。

田代:確かにそれは言えてる。じっくり、したたかに下地つくりコツコツとだな。…何しろだ、相馬が長年免除していたショバ代をあのエリアに課すだけで、膨大なアガリが見込めるしな。関西とその領土を二分したって、余りあるご馳走だ。いただくほかねえよ。なあ…(薄笑)。

坂内:異議なしだ(薄笑)。





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