NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その3


”さらに坂内さんは、仮にそんな状況下に至れば、かなりの確率でその狙撃地にオレを差し向けるつもりだ”

この時点でのノボルの視界は、はっきりと”そこ”に定まっていた。

”つまり、それ以降は、相和会との対峙は諸星ー砂垣ラインから、坂内ー大打ラインにすげ変わるって訳さ。その想定の下、今回の殺しのオーダー、それに砂垣の配下の男を引っ張り込んだってことなんだろうよ。そして、オレもその想定をすでに前提としているしな”

そんなノボルの胸の内を察したかのように、坂内が再び切りだした。

...


「…そこで、例の女勢力を軸とした再編騒ぎだ。お前も承知している通り、なんと幕引き後には相馬の血縁娘が二人に”増殖”しちまった。もっとも、後からのは豹子って最初のみたいなズベじゃなく、見かけは”普通”らしいが…」

「しかし最終決着の火の玉川原では、その二人、ものすごいタイマンだったそうじゃないすっか。最後は危険を察した相和会の幹部が止めに入ったってんですから。そのフツーの方だって、ハンパないってことじゃないと…」

ノボルはさりげなくカマをかけてみた。



「うむ…、今はそう見といた方がいい。その場から相馬の元に連れらてた二人目、そこで遠縁の娘第2号になっちまったってんだからな(苦笑)。…要は相馬の目にかなったんだろう。…ノボル、川原からその子を連れ返ったのは、相和会本家付きの剣崎だ。ヤツは矢島の懐刀だが、二人の娘の守り役は剣崎がメインで当たってるらしいんだ。砂垣も、今回は剣崎が表に出てきたと言っていたしな」

「組のそんな中枢がですか…!」

「剣崎は油断できん男だ。相和会と田代組は昔から何度もドンパチが絶えなかったが、その先頭に立って向かってきたのは常にヤツだった。まあ、今の相和会じゃあ実質組の重要案件をすべてこなしてる剣崎をだ、惜しげもなくを付けたってことであれば…、それだけその娘どもの行動を重要視してるんだろう、相馬は…」

「坂内さん、相馬さんが二人目の子をってのも、自身の死期を目線にしてってことになると?」

「ああ、オレはそう睨んでる。フン、相馬め…」

ノボルの視界からは、坂内の顔は煙草の煙の向こう側にあった。
その濁った白い煙の中からは、一瞬、稲妻のような閃光がノボルの目に飛び込んできた。
それは、坂内の鋭い眼光だったのは言うまでもなかったが。





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