NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
二つのダークな白い吐息⑥



”ふう…、まずはワンステップをクリアってとこだな。早速、三貫野に報告しておこう…”

ノボルは、その日の宿泊先から熊本へコレクトコールで三貫野の連絡先に電話をかけた。


...


「…そうっすか‼無事、会えましたか…。よかった…」

三貫野の明らかに安堵した様子は、受話器越しからもノボルには覗けるようだった。
実際、三貫野は胸を撫でおろしていた。

無理もない。
”秒殺オオカミ”は”実在”していて、しかも思いのほか早く、遥か札幌まで出向いた”上司”がスカウト対象者に会えたのだ。
そのことは、自分の推測が正しいと実証されたことでもあったのだかから…。

”無事ってか…。ふふ、コイツの言葉としては、なんだかなあって言い回しだろ…(苦笑)”

ブレーンのその胸中を察すると、ノボルはいつも沈着な彼らしくない言葉選びがおかしくて、思わずクスッと笑いをこぼしていた。


...


「…じゃあ、そちらの首尾はオレから横浜へ入れときます」

「ああ、頼む。電話代は節約したいしな。…それで、”そっちとあっち”はどうだ?」

「ええ、横浜は先日言った通りで”二つとも”着手間近です。こっちからは週明けに御手洗が横浜に向かいます。ただ…、我々の”駐留拠点”を巡っては、まだ椎名と武次郎さんで意見が分かれていて…」

「じゃあ三貫野‥、お前はどっちでって考えなんだ?」

「あのう…、今のオレの立場ではこの件に口を挟まないほうが…。武次郎さんとはまだ会ってもいませんし…。むしろ、ノボルさんの考えを二人に示してやれば、折り合いがつくと思いますが‥」

「いや、その件はオレ以外で決めて欲しいんだ。ただ、参考までに三貫野が”どっち”かってことは把握しておきたい。今後のこともあるし、とりあえずはな」

三貫野はちょっと間をおいてから答えた。

...


「…オレは、東京埼玉都県境へ駐留の必要性ありって考えですわ。椎名へはそのことはすでに…」

「それを受けて、椎名はどうなんだ?」

「ここは是が非でも”武ちゃん”を説得すると…」

「そうか…。なら、その流れに沿えばいいさ」

ここで”その件”は終わった。

”椎名が武ちゃんときたか…。これで大打グループの陣送りは決まったな。しかし、その先陣があの御手洗か。これは見ものだ(薄笑)…”

ここに、当面の大打グループが乗っかるレールはほぼ定まった…。




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